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最上峡芭蕉ライン観光社長
鈴木富士雄氏
鈴木富士雄氏
【インタビュー】
 -自社と業界の現状は。

 「新型コロナウイルスにより100年に1度といってもいい不況に見舞われており、観光業は2022年までL字形の低迷の中で推移するという見方もある。当社も今年の8月末累計で売上高は前年同期の35%にとどまっている。だが逆境の時こそ、人も企業も磨かれ成長・発展するという信念を持ち、回復に向け知恵を絞っている。現在は100キロ圏内や1泊2日程度の旅行が主流で、そこを見据え客の掘り起こしを図っている。幸い舟下りをコースに組み入れた教育旅行が増えており、この好機を生かしリピーター獲得につなげていきたい。また『Go To キャンペーン』などで首都圏を中心に全国各地から誘客を図り、紅葉の最上峡、雪見舟・こたつ舟などブランド力の高い商品を積極的にPRしていく。人は出会いを求め旅に出る。コロナ収束後も基本は変わらないはずだ。難局を乗り切り、最大の観光資源は人であるとの強い思いで魅力的な観光商品を造成し、地域観光に貢献していきたい」

 -求める人材は。

 「気付きの能力が高く、向上意欲のある人を求める。自分の強みや弱みを自己認識できる人は謙虚さが備わっており、気付きと向上心があればひとりでに成長することが可能だ。そして『感謝に勝る能力なし』の言葉通り、先祖や家族、顧客をはじめ全てに感謝の意を持てることが大切。その資質を備えた人材を採用し、伸ばしていきたい」

 -人材育成のために行っていることは。

 「外部の研修会に参加してもらったり、社内勉強会を頻繁に開いたりしている。人格を磨き、サービス力を高めることで日本一の感動を与えることができる。正社員の半数以上は船頭だが、いずれも個性豊かで観光客の評判は上々だ。近年は旅行新聞新社主催の『プロが選ぶ水上観光船30選』で2年連続1位に選んでいただいた。日頃の研修の成果と感じている」

 -仕事上で影響を受けた人物は。

 「私が47年前に入社した日本ビューホテルの創業者で、ホテル・旅館業界の変革の旗手と言われた箭内源典(やないげんてん)さん。この年は私を含め大卒者50人を一挙に採用した。社員教育を経営者の使命と考える箭内さんと幹部社員の姿勢に感銘し、権限委譲・全社員経営の社風の中で学ぶことができた濃密な4年間だった。また、当社の前社長だった押切六郎さんからは経営の戦術面を学ばせてもらった。基本的には“われ以外はみなわが師”を肝に銘じ、生涯自分磨きを続けていく所存だ」

 ★鈴木富士雄氏(すずき・ふじお) 専修大経営学部を卒業し1973(昭和48)年から4年間、日本ビューホテル(東京)に勤務。77年、最上峡芭蕉ライン観光に入社し95年に専務、99年に社長就任。東北旅客船協会会長、県観光物産協会副会長も務める。戸沢村出身。69歳。

 ★最上峡芭蕉ライン観光 1964(昭和39)年創業で、最上川舟下り遊覧船、レストラン、土産販売が主力商品。保有船舶は16隻で古口-草薙間など3航路を運航。戸沢藩船番所、川の駅最上峡くさなぎ、道の駅とざわ高麗館などの施設を経営する。資本金9900万円。従業員数は正社員35人、パート33人。本社所在地は戸沢村古口86の1。

【私と新聞】本県の課題、進路を示す
 山形新聞を特に愛読しているという鈴木富士雄社長。「進化を続け、読み応えのある記事、企画が増えていると感じる。地方紙は特異性があることが大事で、それが備わっている」と話す。

 よく目を通すのは「おくやみ欄」や知事日程、市町村長の週間行動予定などだ。そして審議内容を詳報している市町村議会の記事。「いずれも山形新聞からしか入手できない情報で、本県や地元地域がどんな課題を抱え、どこに進もうとしているかを示してくれる」と力説する。オピニオン面に載る読者のさまざまな意見もよく読み、参考にしているという。

 記者が一般記事とは別に取材後の感想を記す「記者の目」について「もっと頻度を増やし、地域版以外でも見てみたい」と要望。「記者も地域を良くしたいと思っているはずで、主観の入った率直な声はこちらに刺激をくれるし、参考にもできる」と語った。

【週刊経済ワード】行政のデジタル化
 行政運営の効率化やサービスの質の向上につなげることを目的に、政府はシステム連係を強化するなどデジタル化を推進している。これまで各省庁や自治体がバラバラにシステムを構築し、統一的な運用がしにくい問題点が指摘され、安倍政権下の今年7月に閣議決定した「骨太方針」では行政のデジタル化を向こう1年で集中的に改革すると打ち出した。今月16日に発足した菅政権は、デジタル関係の政策全般を担う「デジタル庁」の新設を目指している。
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