NIBフロントライン

YBSサービス社長
佐藤侑功氏
佐藤侑功氏
【インタビュー】
 -業界の現状は。

 「働き方改革の重要性が増す中、運送事業法などの法律を順守しながら、いかに健全経営を図るかが求められている。例えば私たちの会社では1999年に、全国に先駆けドライバーの運行管理システムを導入した。発着地点や平均走行速度などを全てデータで残すことで、安全運行の徹底につなげている。直近ではドライバーに行う点呼の業務補助として人型ロボット『ペッパー』を活用し、業務の効率化や残業時間の削減に結び付けているところだ。たとえ他社で使用していなくても、自分たちに必要と思うものには積極的に挑戦しなければならないと考えている」

 -新型コロナウイルス感染拡大の影響は。

 「コロナが物流業界に及ぼす影響は大きく、自動車部品など業種によっては大変厳しい状況となっている。私たちが運ぶのは加工食品や食品製造の原材料がメインで、2020年はスーパー関連と比べて業務用などが落ち込んだものの、トータルでは何とか19年並みの売り上げを保っている。今後、コロナ後を見据えた対応が求められるが、例えば設備投資については中小の運送事業者にとって、コスト面で負担がのしかかる難しさがある」

 -求めている人材や、人材確保の考え方は。

 「ハンドルを握る仕事なので心身ともに健康であることに加え、笑顔であいさつができることが基本になる。かつて私自身が配送業務を担当していた時、ある届け先の社長夫婦はいつも笑顔で迎えてくれて、『あなたが荷物を運んできてくれるから、われわれは商売ができる』と感謝されたことを今も覚えている。ドライバーは1日で数十軒に荷物を届けることもある。お客さまを大事に、雨だろうが寒かろうが関係なく、そこであいさつがしっかりできるか、笑顔で対応できるかはとても大切なことになる」

 -影響を受けた人物は。

 「会社を立ち上げた頃、元ヤマト運輸会長の小倉昌男さんと何度か会う機会があり、その話に感銘を受けた。何をすることがお客さまのメリットになるのかを考え、それを実現するためには法律を変えるくらいの意気込みがなければ経営者は務まらないと教わった。また中小運送事業者による本県と全国のネットワーク組織をつくった際、明治大の百瀬恵夫名誉教授にアドバイスいただいた。その中で二宮金次郎と上杉鷹山の言葉、教えが重要だということを学び、今も胸に刻んでいる」

 ★佐藤侑功氏(さとう・ゆうこう) 小牛田農林高(宮城県)を中退し30歳まで農業に従事。以降、仙台市の運送会社「ビー・アイ運送」勤務を経て1985(昭和60)年、YBSサービスを設立し、社長に就く。県内の中小運送業者でつくる山形物流ネットワーク協同組合の理事長を務める。宮城県真山村(現大崎市)出身。77歳。

 ★YBSサービス 食品輸送を主力事業に倉庫業、紙類のリサイクル事業などを展開する。酒田市をはじめ宮城、岩手県に営業所がある。働き方の見直しに積極的な企業として2020年、山形労働局の「ベストプラクティス企業」に選ばれた。資本金は4400万円、従業員180人。本社は山形市鋳物町18。

【私と新聞】環境に関する記事に注目
 佐藤社長は山形新聞や全国紙などから幅広く情報を集めている。場所を問わず短時間でいつでも読めることから、各社のホームページを重宝している。

 物流業界をはじめ自動車に携わる仕事上、二酸化炭素(CO2)削減など環境に関するニュースに注目している。「山形県、そして自分たちに何かできることはないか」と、地球温暖化防止に向けた太陽光や水力、地熱などを活用した取り組みに関する記事はコピーして保存することもある。加えて山形新聞などで積極的に目を通すのは社説だといい、「新聞社の考え方を知り、筆者がどのような思いで書いているのかを想像するのが面白い」と話す。

【週刊経済ワード】グリーン成長戦略
 温室効果ガス排出量の削減を経済成長につなげようと政府が策定した初の包括的な計画。産業ごとの実行計画に加え、2050年の発電割合の参考値を掲げた。再生可能エネルギーが50~60%、二酸化炭素(CO2)回収を前提とした火力発電と原発が計30~40%、水素とアンモニア発電が計10%とした。現状は19年度の速報値で火力76%、再生エネ18%、原発6%。戦略は、改定の議論が進む国のエネルギー政策の指針「エネルギー基本計画」にも影響を与える。
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