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東北ハム社長
帯谷伸一氏
帯谷伸一氏
【インタビュー】
 ―業界の現状は。

 「ハム、ソーセージなど食肉加工品を中心に製造、販売している。新型コロナウイルスの影響で業務用の取引先である飲食店が苦戦しており、東京都内では閉店も多い。一方、スーパーや小売店向けは順調だ。需要の増加を背景に豚肉相場は乱高下している。緊急事態宣言の解除などで今後、どういった業態となるのか注視して対応する。また豚熱の発生に伴い、海外への出荷が制限されている。国内市場でのシェアを高め、輸出の本格的な再開まで力を蓄えなければならない」

 ―どのような取り組みが必要と考えるか。

 「ブランド力を高めることが必要だ。受託生産である業務用は技術があれば対応できる。しかし小売りや通信販売ではブランド力も問われる。ちょっとぜいたくでも、手が届く価格でおいしい商品の需要が増えている。そのため、慶応大先端生命科学研究所、県工業技術センター庄内試験場、山形大農学部などと連携し、地元食材を生かした高品質の商品作りに取り組んでいる。ふるさと納税の返礼品にも採用され、引き合いが強くなっている」

 ―求める人材、社員教育の考え方は。

 「会社は人によって成り立つと考え『敬天愛人』を社是としている。心を高めて経営を伸ばすことを人づくりの柱としており、思いやりがあって真面目、地道に努力を重ねる堅実な人材を求めている。仲間と信頼し合い、自己犠牲を払ってでも仲間のために尽くす利他の精神を、仕事を通して身に付けてほしいと思っている。食品衛生の研修、昼休みの座学を毎月1回行っているほか、10月第2週の日曜に開く感謝祭『オクトーバーフェスト』でのお客さまとの交流を通し、奉仕の心を養っている」

 ―仕事上、影響を受けた人物は。

 「京セラ創業者の稲盛和夫氏の盛和塾で学んだことを経営に生かしている。人として常に正しくあることができるように、会社全体で取り組んでいる。商品作りでは、食品コンサルタント・故磯部晶策氏の影響を大きく受け、食の安全確保についての心構えを学んだ。これらの教えに基づき、品質競争で認められる企業となり、鶴岡全体のブランド力も高められる存在でありたい」

 ★帯谷伸一氏(おびや・しんいち) 中央大商学部卒。東京の食肉会社で修業後、1993年に東北ハム入社。常務、専務を経て2001年に社長就任。日本ハム・ソーセージ工業協同組合東北支部監事などを務める。鶴岡市出身。57歳。

 ★東北ハム 1934(昭和9)年創業の成沢商会を前身とし、39年に東北畜産工業として発足。68年に現社名となった。世界最高レベルの食品品評会「DLG(ドイツ農業協会)コンテスト」でベーコンと粗びきウインナー、熟成ロースハム、骨付き豚もも生ハム「庄内プロシュート・ノービレ」などにより、2019年まで4大会連続で最高評価の金賞に選ばれ特別表彰を受けた。資本金9600万円、従業員50人。本社所在地は鶴岡市宝田3丁目6の58。

【私と新聞】商品開発の発想に役立つ
 複数の新聞を熟読し地域の話題、社会の時流について理解を深めているという帯谷伸一社長。出社後に短時間で各記事の前文に目を通して大まかな内容をつかみ、気になった記事を昼にじっくり読んで頭に入れるのを日課としている。

 以前はスポーツ面や社会面に興味を引かれたが、今は経済面を中心に政治や地元のニュースなど、幅広い分野の記事を読み込む。「連日、新型コロナウイルスに関係する話題一色という感じだが、これから世の中がどう変わるのか紙面から読み取りたい」と語る。

 どんな商品が日々生まれているかも気になる話題。最近は豆をウイスキーだるで寝かせ、香りをつけたコーヒーを販売するという記事が印象に残ったという。「地元にどんな食材があるのかということも知りたい情報だ。コラボ商品につながる可能性があり、開発に向けた発想に役立つ」と話した。

【週刊経済ワード】LINE(ライン)
 2011年にサービスを開始した無料通信アプリの運営会社で、スマートフォンの普及に伴い利用者を拡大してきた。台湾やタイ、インドネシアでも一定のシェアを持つ。近年はスマートフォン決済など金融事業にも注力。19年12月期連結決算は売上高が2274億円、純損益は468億円の赤字だった。連結の従業員数(19年12月末時点)は7913人。
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