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武田園芸社長
武田和博氏
武田和博氏
【インタビュー】
 -業界の現状は。

 「約20年前をピークに公共事業が約4割減っており、そういった新規の造園工事に頼るだけではやっていけなくなっている。そこで各社とも街路樹の剪定(せんてい)や公園の芝刈り、消毒といった管理工事をメインにしている例が多く、中には土木工事に参入しているケースもある。当社の場合は2001年に社長職を父親から引き継いだ時点で、個人住宅の造園、ガーデニング工事に活路を見いだしたいと考え取り組んできた。また地球温暖化問題でゼロカーボンが叫ばれているが、吸収するのは植物だけ。グリーンインフラの整備に期待したい」

 -公共工事と比べ民間の場合では何が必要になるのか。

 「よりきめ細かい作業、配慮による顧客満足度の向上が大事だと思っている。そこでISO9001の認証を取得し品質管理面でアピールしている。これまでの『職人は見て覚えろ』といった感覚を改革するため工程をマニュアル化し、無駄を省いた効率的な動きを社員にも求めている」

 -求める人材は。

 「何より真面目な人。造園を専門的に学べる高校がなくなっていることもあって技術習得は入社後になるが、だからこそ先輩たちから“めんごがられる”存在であってほしい。個人宅のガーデニングでは作業している姿を見られることを意識しなければならない。清潔な身なり・あいさつなどは徹底している。さらに職人であっても顧客との意思疎通をスムーズにすることが求められるので、丁寧に説明できる能力も大事。素朴で無口な職人もいるが、その場合はそうでない社員とペアを組ませるなどしている」

 -影響を受けた人物は。

 「先代の父だろう。以前、重機を購入するかどうか迷った時に『これからはソフトの時代。重機は借りることもできる』と、まずは人並みの社屋を建てるようアドバイスをもらった。しっかりした拠点を構えて商売しなければならない、という意味だったと思う。さらに『書類づくりに金を惜しむな』とも言われた。現場第一といった当時の雰囲気、慣習を改めることが大事だと、先を見据えていたのだろう。このため、ISO取得もそうだが、パソコンやソフトウエアなども積極的に導入しようと思っている」

 ★武田和博氏(たけだ・かずひろ) 京都芸術短期大(現京都芸術大)造園学科専攻科卒。1980年に入社し82年専務、2001年から社長。1級造園施工管理技士、1級土木施工管理技士などの資格を持ち20年、県卓越技能者表彰を受けた。62歳。

 ★武田園芸 公共工事に伴う植栽や造園、管理、個人宅のガーデニング工事などを手掛ける。1956(昭和31)年、資本金1000万円で造園工事業「総合園芸センター武田園芸」創業。82年に株式会社化。94年に資本金を2000万円に増資し、2001年に天童支店を開設。社員数13人。本社は東根市神町南1丁目8の14。

【私と新聞】事故の情報、社員と共有
 父親からさまざまなことを教わったという武田和博社長だが、社長になった際に言われたのは「山形に住んでいるのなら山形新聞だからな」ということ。山形の話題が最も多いからとして念を押されたが、自身もそう思って購読している。
 まず真っ先に一番後ろのページに載る運勢を見て参考にしているという。そこからさかのぼるようにページをめくり、次は天気予報のコーナー。きょうの仕事がはかどるかどうかは空模様に直結するからだ。続いて社会面。中でも交通事故や労災事故が載っていれば詳しく読む。自分や社員に置き換え、けがをすることのないよう気を引き締めるためだ。朝礼でも必ず話題にして社員で共有している。俳壇のコーナーは趣味のバンドの作詞経験を生かし、自作が紙面に2回掲載された。

【週刊経済ワード】新しい資本主義実現会議
 岸田文雄首相が提唱する「成長と分配の好循環」の具体化に向けた施策を議論する会議。首相が議長を務め、松野博一官房長官と山際大志郎経済再生担当相が副議長を担う。菅政権が創設した成長戦略会議を廃止して、役割を引き継ぐ形で発足した。有識者メンバー15人のうち7人が女性となっている。
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