NIBフロントライン

後藤精機社長
後藤康之氏
後藤康之氏
【インタビュー】
 -業界と自社の現状は。

 「当社は工作機械を使い、切削加工によって部品を製造し、メーカーに納めている。材料は鉄のほかアルミ、ステンレスなど多岐にわたる。部品図面に基づき自社でプログラミングし、求められる条件や使用目的に合う形状、精度に削る。近年は工作機械が発達し、工程数が多くても1台の機械で対応が可能だ。当社もそうした機械を使い、コスト低減や納期短縮を目指し日々努力している。取引先は半導体製造装置や自動車部品製造、医療機械製造など分野が幅広く、さまざまな産業に刺さっていることが当社の特長になる。緻密な加工試作はもちろん小ロット注文にも迅速対応し、取引先から高い評価を頂いている」

 -求める人材は。

 「忍耐力のある人、感謝する心を持っている人だ。それは能力、学歴に関係なく人生で培う素地のようなものだ。『継続は力』の言葉通り、長く勤務することで技術を習得できる。そのためには忍耐力が欠かせない。最近は感謝の気持ちを素直に表す人が減っているが、誰もが周囲に育てられており、感謝の心は常に持っていたい」

 -求める能力と、それを身に付けるために必要な努力は何か。

 「コミュニケーション能力は欠かせない。新型コロナウイルス禍で人と対面する機会が減った。スマートフォンばかりいじる若者が多いが、人と会話して学ぶことが大切だ。仕事と関係ない会話でも、人と話すことで良いアイデアが生まれることがある」
 「チャレンジ精神も欠かせない。仕事の幅が広がれば会社の業績は伸びる。仕事の幅を広げるためには、今任せられている仕事以外にも挑戦することが必要になる。マルチタスク(複数作業を同時に、もしくは短期間で並行して行うこと)がこなせる人間になってほしい。当社も社員の潜在能力を引き出せる会社になりたい」

 -仕事で影響を受けた人物は。

 「機械大手『日東工器』創業者の故御器谷(みきや)俊雄さんの著書、考えに影響を受けた。御器谷さんは、幸田露伴の著書『努力論』を経営に役立てていた。私もそれを見習い、幸田の主張する『惜福』(福を取り尽くそうと欲張らず)、『分福』(福を他人に分け与え)、『植福』(将来にわたり幸せであり続けるよう今から幸福の種をまいておく)の三つを大切にし、会社の利益が上がれば社員に還元したい」

 ★後藤康之氏(ごとう・やすゆき) 東海大山形高、仙台保健福祉専門学校を卒業後、ハウスクリーニング業、製造業での勤務を経て2004年、後藤精機を創業し社長に就任した。山形市出身。43歳。

 ★後藤精機 2004年に後藤康之社長が山形市柏倉で個人創業し、15年に株式会社化。19年に山形中央インター産業団地に工場を新設し、20年に本社を移転した。加工機の芯を捉えた爪のオーダーメードサービス「CHUCKING HERO(チャッキング・ヒーロー)」を考案。段取りや機器着脱の時間を削減し、加工時間の大幅短縮と生産性の飛躍的向上を実現したとして、県内の優秀なデザインの物、サービスを顕彰する本年度の「山形エクセレントデザイン2021」で準大賞を受けた。従業員数27人、資本金300万円。本社所在地は山形市くぬぎさわ西1の1。

【私と新聞】新たな単語、覚えるツール
 後藤康之社長は新聞について「新たなワード、単語を覚えるためのツールの一つだ」と指摘する。毎年新たな言葉が生まれ、カタカナ語も多い。「その言葉が何を意味するのか理解していなければ、仕事ができない」とも語り、新聞で見た言葉の意味を調べ、手帳にまとめて自分だけの“辞書”を作っている。
 新型コロナ禍で収入が減った人や失業者が出ているとの記事も目にした。「食事にも困っている子どもが多い。いずれ次世代を担う子どもたちだ。将来、経営の一線を退いたら県内の子ども食堂を支援する社会貢献事業に携わりたい」と語る。
 他にも経済やスポーツ、地域の話題など幅広い面に目を通すという。「自分の心が折れそうな時に『やましんサロン』を読むと心がほっとする」と笑う。

【週刊経済ワード】日本の物価動向
 日本の物価は、バブル経済の崩壊や金融危機の後遺症で低成長に陥ったことを背景に、2000年代前半以降、下落や低い上昇率が長い期間続いた。13年以降は消費者物価指数の前年比が上昇に転じるなどしたものの、日銀が掲げる2%の物価上昇目標は実現していない。最近では、原油や原材料の高騰を背景に企業間で取引する物品の価格動向を示す企業物価指数が歴史的に高い水準での上昇を続けている。この影響で消費者物価が押し上げられるかどうかに注目が集まっている。
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