NIBフロントライン

山形新興社長
竹田良一氏
竹田良一氏
【インタビュー】
 -業界の現状を踏まえ、自社の取り組みは。

 「東日本大震災の復興事業でコンクリート製品の需要拡大が続いたが、10年経過して転換期を迎えた。昨年春から発注が激減し、業界では売上高がおおむね4割減とされ、半減した業者もあると聞く。当社もピーク時より2割減になった。加えて原材料や燃料などの高騰に苦慮している。7%から10%ほど販売価格を上げないと経営が成り立たない状況だ。副理事長を務めている県コンクリート製品工業協同組合では、公共事業などの価格設定を見直してもらおうと、昨秋から関係先に理解を求めてきた。さらにロシアのウクライナ侵攻で原油価格がどんとはね上がるなど、頭の痛い状況だ」
 「先を見越した経営が求められる中、創業時から低コストで機能性の高い製品を自社開発し、積極的に特許なども取得してきた。オリジナル製品が自社の強みといえる。常に他社の一歩前を走り、新製品を開発する戦略は変わらない。震災復興に伴う受注増を経験したからこそ、挑戦を続ける必要性を強く感じた」

 -求める人材は。

 「好奇心が強く、創造力のある人材を求めている。新製品開発を担う技術部が中核となるが、入社したら最初は必ず工場を経験してもらう。学歴に関係なく、やる気のある社員を登用して育ててきた。事務職や営業職なども工場研修は必須だ。どうやって製品を作っているのかを知ることはとても重要で、製品を心から好きにならないと売れないし、開発もできないと思う。常にさまざまなことに興味を持ち、好奇心を持って情報を集めたり、新しいことに挑戦してほしい」

 -仕事上で影響を受けた人物は。

 「38歳で独立した時に、資金や事業を支援してくれた兄弟会社の社長だ。人間学、経営学を教えてもらった。特に『円の経営学』は心に残る。通常、組織はピラミッド型で社長が指示を出すことは必要だが、上意下達だけではなく社長も管理職も一般社員も円のようになり、風通し良くコミュニケーションできる組織の重要性を教わった。私は創業者なので、社員たちにはどうしても遠慮がある。時にお酒の力も借りて、同じ目線に立ち、さまざまな意見を出し合える関係を大切にしたい」

 ★竹田良一氏(たけた・りょういち) 荒砥高卒。1989年に山形新興を設立し、社長に就任。2008年にシンコー通商を設立し、社長に就任。17年には中国に青島和興新型建材有限公司を設立し、董事長(とうじちょう)に就いた。白鷹町出身。70歳。

 ★山形新興 1989年創業。道路や河川などの土木工事で使われる多様なコンクリート製品の製造販売を手掛ける。本社工場のほか、営業所を宮城、岩手、福島、秋田、神奈川、大阪の6府県に設置。関連会社は主に販売部門を担うシンコー通商(仙台市)、本社工場と同等の工場がある中国の青島和興新型建材有限公司など。社員数88人、資本金9千万円。本社所在地は白鷹町佐野原638の2。

【私と新聞】各紙比べ、論調確認
 山形新聞と全国紙、経済紙の3紙を購読している竹田良一社長が必ず目を通すのは、国際、政治、経済の各面。「海外に会社があると、国際情勢の変化ですぐに大きな影響を受ける。各紙を読み比べて論調を確かめる時もある」と語る。
 山形新聞では、お悔やみ欄のチェックを個人でも会社としても欠かさない。「お悔やみは必ず連絡があるわけではなく、新聞でしか知り得ないときも多い」と語る。また「記事の末尾につく記者の署名は親近感が湧く」と評価する。
 身近な出来事を伝える地域版については「もっと深い内容にできるのではないか」と注文。「県内の別の場所で行われた同じような記事が続くと感じることもある。取り上げる人物がマンネリ化していないか、もっと深掘りできないか、考えて工夫してみてほしい。地域には頑張っている若者などがまだまだたくさんいるはずなので、ぜひ掘り起こしてほしい」と期待を寄せた。

【週刊経済ワード】ランサムウエア
 企業や団体のパソコンやサーバーに侵入し、機密文書や顧客情報のデータを暗号化して使えない状態にしてから、復元と引き換えに金銭を要求するコンピューターウイルス。英語で身代金の意味の「ランサム」と、「ソフトウエア」を組み合わせた造語。ハッカーは金銭の支払いに応じなければ、データを公開すると脅すことが多い。
[PR]