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県森林組合連合会会長
佐藤景一郎氏
佐藤景一郎氏
【インタビュー】
 -林業を取り巻く環境をどう捉えているか。

 「世界的に木材価格が高騰する『ウッドショック』やロシアによるウクライナ侵攻の影響で輸入材が減少し、国産材の価格は1年半前の1・5倍ほどに上昇している。しかし、1980年ごろのピーク時に比べればまだ10分の1程度だ。出荷量を一気に増やすことはできず、資材や燃油、人件費の高騰も続いているため生産者に恩恵が及ぶまでには至っていない」

 -最大の課題は。

 「人材不足だ。森林組合の役割は苗木の生産に始まり、植林、下刈り、間伐などの『保育』、出荷を目的とした間伐、最終的な主伐、再造林と多岐にわたる。とりわけ『保育』の分野は炎天下での作業もあり重労働になる。ドローンを使った除草剤散布の導入など負担軽減を図り、林業を目指す若い人を確保したい」

 -本県森林組合トップとして重視していることは。

 「豊かな森林資源を次世代につなぐだけでなく、営々と林業を築いてきた先人の思いもつないでいくことこそが大事だと認識している。協同組合の本分である『一人はみんなのために、みんなは一人のために』を基本に、組合員の所得向上と林業で働く人々の社会的地位の向上に努めたい」

 -求める人材は。

 「各分野の現場で働く人とともに、業務全体を包括的にマネジメントできる人材が必要だ。補助金の申請などの面で県や市町村との関係も重要であり、信頼できる人間形成が求められる。さらに、林業の専門的な知識を持つ林業技士などの有資格者に加え、森林所有者に対し、どんな機械を使い、どういうルートで木材を搬出するかなど具体的提案ができる施業プランナーなどの確保が重要と考える。職員には資格取得に向け、講習や研修への積極的な参加を勧めている」

 -影響を受けた人物は。

 「山に関しての師は、林業を家業とするわが家の『山守(やまもり)』をしていた斎藤七三郎さんだ。30ほど年上で、もう亡くなったが、2人でよく山に入った。『荒廃した森林を元に戻すには肥やしが必要。肥やしとは人間の足跡だ』と教えられた。現場に行くことが何より大事ということ。自分にとって山づくりの基本となっている。いくらICT(情報通信技術)の時代になっても伝えていきたい」

 ★佐藤景一郎氏(さとう・けいいちろう) 新庄北高から日本大経済学部に進み、卒業と同時に家業の林業に従事。1996年に最上広域森林組合(真室川町)組合長に就き、2004年から県森林組合連合会の会長を務める。真室川町在住。68歳。

 ★県森林組合連合会 県内13の森林組合の連合組織。総組合員数は3万5700人で、その所有森林面積は18万8250ヘクタールに上る。会員組合に対する指導、監査、共同販売、森林の病害虫防除、調査伐採などの事業を行っている。所在地は山形市成沢西4丁目。天童市に木材流通・加工センター、酒田市に木材流通センターを持つ。

【私と新聞】初対面でも共通の話題
 佐藤景一郎会長は「新鮮な情報を得るため」として毎朝、山形新聞を読んでいる。打ち合わせや商談など仕事で記事のことが共通の話題になり、初めて会う人ともスムーズに話が進むケースが多いという。東京などに出張しても山新に掲載されている地域の動きが気にかかるほど、読むことが習慣になっている。
 山新は文学や文化・芸術関連の記事が面白いとする。新書の紹介や、それに関する記事が充実していると評価する。とりわけ文化面に連載されている五木寛之さんの「新・地図のない旅」や「気炎」がお気に入りだ。次を読むのが毎回楽しみという。
 「ニュースやテーマによって左右されることはあるだろうが、今後も正確であると同時に、地域と共にあるという基本を堅持しながら、タイムリーな話題を提供し続けてほしい」と期待を寄せる。

【週刊経済ワード】物価高対策
 ロシアによるウクライナ侵攻に伴って原油や小麦などの価格が高騰し、国民の日常生活や企業収益に影響が出ている。これらの打撃を和らげるために、岸田文雄首相が策定を指示。原油高対策と食料安定供給、中小企業支援、困窮者支援を4本の柱に据えた。新型コロナウイルス禍からの回復を目指す日本経済の腰折れを防ぐ狙いもある。
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